第5話 春の日に理科室へ訪れた客

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 少し照れつつ言うも、クロードの方は大喜びし 「Thank you,知己」  ほんの僅か、頬に何かが触れる感触。 「……!」  それが知己の頬に触れたクロードの唇の感触だと、数秒経って気付いた。 「く、クロード……?」  窓越しの突然のキスに、知己は目を見開く。  その真意を問い正すかのような視線に、 「感謝」  にっこり微笑んでクロードが答えた。 (あ、ああ。ただの感謝の意味か……)  と思うも、どうしても顔が赤くなってしまう。 (ば、ばか、俺。意識したら、クロードが変に思うじゃないか)  妙な汗をかく。 (うわ、変な意識するな、俺)  妙な間が流れる。  クロードの方に視線を向けることもできずに俯いていると、 「このっ! 先生から離れろ、紅毛人!」  と理科室に伸びる廊下の遥か先から叫ぶ声が。  門脇だった。  菊池も付き合わされているのだろう。  一緒に居る。  ようやく長ーい学級委員会の会議が終わったらしい。 「こーもー人?」  またもやクロードが首をかしげる。 「何ですか?」  と聞けば、知己が 「……また日本史で最近習った言葉を使っているな……」  と呟く。  知己は、突如叫んだ門脇のおかげで、やっと顔を上げられた。 「日本史?」     
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