第5話 春の日に理科室へ訪れた客

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 黙るしかない知己の代わりに、菊池が答える。 「知己先生とベタベタすんな!」  尚も怒りが収まらない様子の門脇に (知己……先生……?)  クロードが僅かに笑った気がした。 「ニヤニヤするなよ! ムカつく!」  その様子にますます門脇が怒り狂う。 「うわー、なんだか『狂い牛』状態の門脇。赤い布持ってたら飛びかかられそう」  菊池が半分真面目に言った。 「既に飛びかかったじゃないか……煽るなよ、菊池」  いつ門脇がまたクロードに飛びかかるかと、知己は気が気ではない。  知己が気になるのは、それだけではない。  門脇がどこまで見たか……それが重要だ。 「こんな所まで何しに来たんだよ? その上、先生にくっついて……何なんだよ、お前?」  鼻息荒く門脇が問うが、その発言に (さっきのは見られてなかったみたいだな)  知己は安心した。 (よく考えたら、見える訳ないな)  クロードが頬にキスしたのは、理科室の内側の知己に。  角度から言えば廊下の、しかも端にいた門脇には、二人がくっついていたような……そんな、なんとなくの様子しか見えないだろう。 「教師に『お前』とは、ダメじゃないですか? 門脇君」  門脇を諭すクロードだったが     
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