第5話 春の日に理科室へ訪れた客

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「クロードは、まだ学校に来て日が浅いだろ。単に学校の中を探検してただけ。俺を理科室で見かけて声かけて来ただけ。で、俺が窓開けて話をしてただけ」  さすがに頬にキスの事は、門脇に……というか、生徒に言うのを憚られた。 「それだけ?」  しつこく聞く門脇に 「それだけ!」  知己は自分を納得させるように言うのだった。 (そう、それだけ。多分、お母さんの面影に重ねて、思わず頬にキスしちゃった……て感じ……だよな?)  無意識に、自分の頬をそっと撫でて、納得させる。 (映画とかでも、割とよく見るよな、そういうシーン)  などと考えていたら、 「あいつとどんな話をしてたんだ?」  と門脇が更に尋ねてきた。 (浮気妻を問いただす夫状態だぞ、門脇)  そう菊池は思ったが、それはさすがに門脇の逆鱗に触れそうなので黙っていた。  うっかり地雷を踏み抜くこともよくする菊池だが、こんな怒り牛みたいな門脇の地雷だけは、踏みたくない。 「あ、そうだった。その件だが、お前らに話がある」 「?」 「お前らが、この間のレクで結託してズルした話。菊池、お前、俺の番号を門脇に教えていたそうだな。クロードが見たって言ってたぞ」  ……やぶ蛇……。  その後、門脇と菊池は散々知己に説教されることとなった。  どんなに懐いていても、担任からのお説教は門脇も菊池も嫌なようだ。     
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