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「クロードは、まだ学校に来て日が浅いだろ。単に学校の中を探検してただけ。俺を理科室で見かけて声かけて来ただけ。で、俺が窓開けて話をしてただけ」
さすがに頬にキスの事は、門脇に……というか、生徒に言うのを憚られた。
「それだけ?」
しつこく聞く門脇に
「それだけ!」
知己は自分を納得させるように言うのだった。
(そう、それだけ。多分、お母さんの面影に重ねて、思わず頬にキスしちゃった……て感じ……だよな?)
無意識に、自分の頬をそっと撫でて、納得させる。
(映画とかでも、割とよく見るよな、そういうシーン)
などと考えていたら、
「あいつとどんな話をしてたんだ?」
と門脇が更に尋ねてきた。
(浮気妻を問いただす夫状態だぞ、門脇)
そう菊池は思ったが、それはさすがに門脇の逆鱗に触れそうなので黙っていた。
うっかり地雷を踏み抜くこともよくする菊池だが、こんな怒り牛みたいな門脇の地雷だけは、踏みたくない。
「あ、そうだった。その件だが、お前らに話がある」
「?」
「お前らが、この間のレクで結託してズルした話。菊池、お前、俺の番号を門脇に教えていたそうだな。クロードが見たって言ってたぞ」
……やぶ蛇……。
その後、門脇と菊池は散々知己に説教されることとなった。
どんなに懐いていても、担任からのお説教は門脇も菊池も嫌なようだ。
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