第5話余談 それは挨拶

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第5話余談 それは挨拶

 リビングでTVを見ていた時だった。 「そういや、お前……海外に行ったことあったよな? しかも、何回も」  知己が将之に尋ねる。 「ありますけど」 「ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」 「はい」 「映画とかでも見るけど、外国人が頬に……、えっと、頬にキ……」 「き?」  努めて平静を装っているが、言いよどむ知己に将之は少しばかり怪しんだ。 「キ……キスの挨拶ってのは、よくする事なんだろうか?」  照れたように聞く知己に (……キスという言葉に照れたのかな?)  と将之は思った。 「ああ、しますね。親しい間柄なら、挨拶代わりに。ヨーロッパ圏じゃなく、アジア圏でもしているのを見ましたよ。日本人には慣れないですけど……ね。それが、どうかしたんですか?」 (相変わらず、大和撫子体質ですね) 「いや、挨拶……ならいいんだ。やっぱ、俺の考え過ぎみたいだから」 「……?」  将之は不思議そうな顔をした。  知己の方は、まだなにやら考えている。 「あのさ……その……」 「何です?」 「試しに、お、俺の頬に……キスしてくれない?」 「は?」   突拍子もない知己の申し出に、将之は驚き、声を上げた。  当の知己も、将之の反応に今更ながら     
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