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「い、いや、いい。ごめん。今の聞かなかったことにしてくれ」
と慌てて自分の言葉を撤回。
だが、時すでに遅く、将之がニヤリと嫌な笑顔を見せている。
「そんなことする訳ないでしょ? 先輩からの貴重なキスのおねだり、聞かなかったことになんてできませんよ」
「わー! そんな事、言うな! 恥ずかしい!」
(クロードとの違いを知りたくて、試しに将之にしてもらおうと思っただけなのに、「キスのおねだり」だ?! 俺はそういうこと言ったことになるのか?!)
自分の言った意味を理解し、知己は慌てた。
「キスしてくれって言ったのは、先輩じゃないですか?」
ますます嬉しそうに笑う将之に
「笑うなっ!」
としか言えない。
そんな時だ。
将之が知己の首筋に手をかけ、抱きしめられるように肩に引き寄せられた。
そこから、将之の顔がゆっくりと降りてくる。
(え……?)
頬にほんの僅か、唇が触れ「ちゅっ」と軽い音を立てて、過ぎ去った。
(ううううううううううううううううううううううううう、うわー! うわー! うわー!)
知己の顔がみるみる真っ赤になっていくのが分かる。
湯気でも出そうな勢いだ。
(茹でタコ……)
正面から見据えて、将之は思った。
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