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門脇が聞く。
「化学どころか、古典と英語、数Ⅰもだよ。」
自棄的になって、菊池が笑って答えた。
「悲惨……」
「門脇にはない悩みだろ?」
やけくそになって言っているが、涙目になっている。
「このままじゃ期末が大変だろう? 化学だけでも勉強をみてやろうと思って、捕まえた」
知己は親切で言っているのだが、どうも、菊池にとっては大きなお世話のようだ。
そんな二人を見て
(……羨ましい)
と門脇は思った。
(俺も先生に捕まえてほしい……。いや、もう心は、めっちゃ捕獲されてんだけど。……って、何考えてるんだ、俺)
相変わらず、全国順位一桁男は、自分には決して訪れないと思われるこの状態を羨ましく思っていた。
(わざと赤点取ったら、校長からも先生からも理科室出禁を喰らうだろうし)
門脇は成績を落とさないという理由で、放課後の理科室訪問を許されていた。
ふと門脇が見ると、机を挟んで向かい合う知己と菊池の額がくっつきそうなくらいに近い。
「こ、こらー!」
門脇は、瞬間、声を出していた。
「そんな首の角度変えたらキスできそうな状態、お父さんが……いや、俺が許しません!」
「はあ?」
知己と菊池、二人して
「誰がお父さんだ?」
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