第6話 やんごとなき菊池の成績事情

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「ていうか、キスなんかしないし」 「余計な事言って、菊池の勉強の邪魔するな」 「門脇は、向こうに行ってて」 「あ、明日の実験の準備をしておいてくれると助かる。要る物は、そこにメモ書きしておいたから」  矢継ぎ早に、冷たくあしらわれた。 「おい。先生はともかく、菊池も冷たくない?」 「赤点がかかっている俺の邪魔はしてくれるな、門脇」  悲壮な菊池の顔に、真剣さが垣間見える。  そんな時だった。  ガラリと理科室のアルミドアが開いたかと思った瞬間 「菊池くーん!」  クロードが叫びながら、入ってきた。 「ないです! あれは、ないです!」  菊池に詰め寄る。 「私の教える英語で、何、悲惨な点数を取ってくれちゃってますか?! ありえなーい!」  興奮しているらしい。  いつもの流暢な日本語が、めちゃくちゃだ。 「菊池、……英語は何点だったんだ?」  知己が静かに聞く。 「……19点……」 「化学より、酷いじゃないか?!」  あまりの悲惨さに驚く知己に 「化学は、何点だったですか?」  今度はクロードが尋ねると、 「……23点」  嫌そうに菊池が答える。 「ああ、そういうの、私、分かります。『どんぐりの背比べ』って言うんですよね?」     
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