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「ていうか、キスなんかしないし」
「余計な事言って、菊池の勉強の邪魔するな」
「門脇は、向こうに行ってて」
「あ、明日の実験の準備をしておいてくれると助かる。要る物は、そこにメモ書きしておいたから」
矢継ぎ早に、冷たくあしらわれた。
「おい。先生はともかく、菊池も冷たくない?」
「赤点がかかっている俺の邪魔はしてくれるな、門脇」
悲壮な菊池の顔に、真剣さが垣間見える。
そんな時だった。
ガラリと理科室のアルミドアが開いたかと思った瞬間
「菊池くーん!」
クロードが叫びながら、入ってきた。
「ないです! あれは、ないです!」
菊池に詰め寄る。
「私の教える英語で、何、悲惨な点数を取ってくれちゃってますか?! ありえなーい!」
興奮しているらしい。
いつもの流暢な日本語が、めちゃくちゃだ。
「菊池、……英語は何点だったんだ?」
知己が静かに聞く。
「……19点……」
「化学より、酷いじゃないか?!」
あまりの悲惨さに驚く知己に
「化学は、何点だったですか?」
今度はクロードが尋ねると、
「……23点」
嫌そうに菊池が答える。
「ああ、そういうの、私、分かります。『どんぐりの背比べ』って言うんですよね?」
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