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と隣の理科準備室に行った知己を追いかけて、クロードもそちらへ消えていった。
(あのクソ異人め!)
見た目の穏やかで素直そうな雰囲気と違って、なかなか自分の意志を曲げない。
(あの手この手で、理由見つけて理科室に居座りやがる)
ある意味、機転が利くというか……今までの教師にない態度だった。
元々問題児としてあがっているのもあるが、門脇が県知事子息というのもあって、他の教師はどうしても一歩引いてしまう。
が、クロードにはそれがない。
知己を除く大人という大人を嫌い、その知識で言い負かせてきた門脇には、このクロードの態度が鼻についた。
「菊池。今、俺、攘夷志士の気持ちがなんとなくだけど分かった気がする」
「え? 何、それ」
「いいから、さっさと勉強を終わらせろ。俺も準備に混ざりたい」
「うわ、焦らせるなよ。なんか分からないけど、とばっちりがこっちに来た!」
機嫌悪そうな門脇に、思わず菊池がそう言った。
菊池が苛々とする門脇に勉強を教えてもらい、十分ほど経った頃だろうか。
少し怒りが収まりつつも、門脇の耳は常に二人が居る理科準備室の方に向けられていた。
あれこれとクロードが準備室の標本や薬品について質問したり、触ってたりしているようだ。
ずっと物音が聞こえる。
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