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「ね、寝癖ついてないって今朝言ってた!」
「あー。あれ嘘」
「うそ!? え、じゃあ今……」
「っていうのが嘘」
ベッと、大地が得意げな顔で赤い舌を出す。
嘘ばかりが繰り返される大地の言葉に真実を追う方が間違っていたと、宙は浅く溜息を吐き、滲んだ涙を手の甲で軽く拭った。強くやると赤く痕が残って、また大樹に心配をかけてしまう。
「……大地が放課後に学校いるの、珍しい」
「んだそれ。忘れ物、携帯取りに来たんだよ。お前は?」
「大樹待ってる。今日はなんか委員会、長引いてるみたいで。まだ戻ってないんだ」
一瞬、大地が怪訝な顔をした。
無意識にだろう。大地の視線が窓の外を覗き、つられて向けた宙の目にも、校門へと向かう生徒の姿がちらほら見える。
「……、大地?」
何かを考え込むようなその横顔に、宙は思わず声をかけた。
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