泪の代償

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「そっか。ごめんね、宙」 「っ、ううん! 待ってるって言ったの、俺だから」 「大地も、相手しててくれてありがとうね」 「そんなつもりで喋ってたわけじゃない」  飛び退るようにして離れた宙を挟んで、大樹が大地に礼を述べる。つられて宙も言いかけたお礼の言葉は、突き放すような声音に行き場をなくした。 「お前も。あんまフラフラしてっと、迷子になんぞ」 「っな……ならないし!」 「どうだか。いつも飼い主が探しに来てくれるとは限んねえんだから、ちゃんと帰り道は覚えとけよな」  ふっと肩頬だけをあげて笑った大地が、散々寝癖だなんだと揶揄し続けた宙の髪をくしゃりと撫でて通り過ぎる。乱雑なそれに顔をしかめた宙は、過ぎる背を追う最中に見た大樹の横顔に、ついその動きを止めた。  普段なら、呆れたような顔をしながらも楽しそうに目を細めている大樹の横顔が、何故だかひどく陰って見える。  委員会前もこんなだっただろうかと、まじまじ見つめていた宙は、ふと振り向いた目にギクリと背筋を伸ばした。
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