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どれだけ心が悲鳴をあげていても、大好きな人のおめでたいことだ。ちゃんと、祝福しなきゃ、いけないのに。
「……ごめん。びっくりして、なんか、言葉が……」
「ううん、俺こそ急に言ってごめん。でも、宙にはちゃんと、伝えておきたくて」
春の陽気みたいに穏やかで、暖かくて、優しい大樹。
今はその優しさが、痛くてたまらない。
「……嬉しい。ありがと」
痛みを堪える宙の前で、大樹がくすぐったそうに笑う。
やめて、嫌だと暴れそうになる気持ちをグッと飲み込んで、宙は、出来る限りの笑みを作った。
「おめでと。よかったね」
「ありがとう。……ごめんね、宙」
幼馴染として、友人として正しい距離感でいようとした宙に、大樹がやけに重たい謝罪を口にする。
気持ちが、溢れてしまっていただろうか。そんな不安に駆られるほどのそれに、宙はこくりと喉を鳴らした。
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