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「……、なんで謝るの。嬉しいよ、俺も」
「うん、……でも。ごめん」
「変な大樹」
もしかしたら、気持ちがバレていて。未来はないと遠回しに想いを否定されたのかもしれないと。俯く大樹の横顔に考えた宙の心が、また1つ、音を立ててヒビ割れていく。
深く息を吸った宙は、ゆっくりとベンチから腰を上げた。
「帰ろ。多分もうすぐ雨が降る」
「雨?」
「湿気の匂い。しない?」
つられて立ち上がった大樹が、すん、と空気を嗅ぐ。得意げな宙の隣で、大樹はよく分からないと困ったように笑った。
「宙って、小さいときから雨当てるの得意だったよね」
「……俺、泣き虫だから。空が泣くタイミング、分かるのかも」
水気を帯びた風に怯えるように、葉がざわついた。
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