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* * *
中学生になって自室が与えられることになったとき、迷うことなく向かって右側の部屋を選んだ。
ベランダに続く大きな窓の向こうに、焦がれていたから。
「……」
闇にほど近い濃紺のカーテンが、静かに揺れる。
手の届く距離にいることなど、分かっている。ほんの少し欲張れば、きっとこの指の先くらいは許されるであろうことも。
それでも、この手は伸ばせない。望まれているのが自分ではないことを、痛いほどに理解しているから。
他の誰が同じだと言っても、大切な人の目に同一で映らない以上、意味はない。
だからきっと、このままでいい。
遠くて近い、曖昧なままの距離感で充分なんだと。
彼もまた、叶えるつもりのない恋をしていた。
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