視線の先

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 今日1番に鋭くて、タイミングの悪い言葉。頷いてしまうには後ろめたく、無視をするには圧のある笑みが脳内を繰り返し巡る。 ──……否定、か……。  宙はのっそりと、柔らかい布団から背中を引き剥がした。足元に影を伸ばす夕陽を振り向けば、窓向こうに夜を取り込んだような黒のカーテンが見える。  大地が好みそうな色合いに息を吐いた宙は、片足をベッドの縁に乗せた。立てた片脚を抱き込み、また深くため息をつく。  例えば、諦め悪く燻るこの気持ちを伝えていたのなら。医師の言う通り、こんな事態にはなっていなかったのかもしれない。  でもじゃあ、大樹との関係は? 優しい彼のことだから、あからさまに宙を避けたりはしないだろう。けれど決して、今ほど近くにもいられなかったように思う。  そう考えると、宙は、この状況で良かったと思ってしまうのだ。声を代償に大樹の隣に並んでいられるのなら、それでも構わないと。  頑張ろうと言ってくれた母や担当医には申し訳ないけれど、それは紛いもなく、宙の本心だった。
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