視線の先

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──まぁ……どのみちもう、言えないんだけど。  ベッドから左脚を下ろした宙の手が、するりと喉に触れる。ひんやりした指先に息を詰めながら開いた唇は、やはり、どんな音も出せなかった。 「宙」  声が出ないことに安心しながらも、どこか不安げな宙を誰かが呼ぶ。ノックに紛れて聞こえた声だと、宙は恐る恐る、閉じた扉を振り向いた。 「俺です、大樹。……入るよ?」 「(大樹……!?)」  思わぬ訪問者に動揺する宙を放って、ガチャリとドアノブが押し下げられる。返事をする間も与えられずに開いた扉に、宙は呆然とその姿を見上げた。 「あ、良かった。起きてたんだね」  見慣れた制服姿の大樹が、ベッドに腰掛けぽかんとする宙に安堵の表情を見せる。寝たふりをしていればよかったと気付いたのは、大樹がベッドを背凭れに座ってからだった。
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