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宙の幼馴染である橋宮兄弟は、一卵性の双子だった。幼い頃は瓜二つの彼らとどっちがどっちか当てる遊びをやったり、大人を惑わせて遊んだりしたけれど、今はもうそんなこと出来ない。
顔はもちろん、声や仕草、黒子の位置まで似通っている彼らは、なぜか性格だけは真反対に成長してしまったから。
穏やかで優しく、人当たりのいい大樹と。言葉も視線もきつい、ぶっきらぼうな大地。
保育園から中学まで続いた友人たちはみんな、少なからず1度は双子を間違えていたけれど、高校ではそんな人を見かけていない。それほど、彼らの見た目にも性格の違いが表れていた。
「寝癖ついてんぞ」
「ッ……!」
大樹が出てくるのを待つ宙の隣で、なぜか一緒になって立っていた大地の手が、冷たい声とともに宙に触れる。反射的に振り向いてそれを避けた宙に、大地は赤い舌を覗かせた。
「うそ」
「っ……」
「なにがびくびくしてないだ。ガッチガチじゃねえか」
すり、と襟足を撫でるかさついた指に、宙の意思とは関係なく肩が跳ねる。不満げな大地の言葉に歯痒さと悔しさを感じるものの、宙はうまくそれを伝えられず、ぎりっと下唇に歯を立てた。
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