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「……で、今度は泣くのか」
「な、いてない……っ」
「涙は落ちてないの間違いだろ」
「ぃたッ」
ビシッと弾かれた額に走る鈍い痛みに、宙の目からぽろりと涙が落ちる。ほら泣いたと、どこか得意げに笑う大地に、宙は眦を釣り上げた両目からぱたぱたと涙をこぼした。
「だ、大地がそういうことするから……!」
「そういうことって? 俺、嘘ついただけだけど」
「で、デコピンだってしたっ」
「大して痛くなかっただろ」
ハッと鼻を鳴らす大地は、痛くないものはしてないと同義だと謎理論で宙の反抗をねじ伏せる。悪びれないそれが腹立たしくて、宙は涙に潤む目で大地を睨むけれど。
「残念。ぜんっぜん、怖くねえわ」
「い、ひゃい……っ」
にやりと肩頬をあげた大地は、むしろ楽しそうな顔をして宙の頬を引っ張った。柔らかいだの、よく伸びるだのと好き勝手に堪能する大地が、ひどく目を細める。
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