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「子供みてえ」
「うっひゃい」
「抵抗しねえの?」
「ひてもむひゃなことはひない」
「ははっ。見事になに言ってるか分かんねえ」
けらけらと声を立てて笑う大地に、宙がそっと息を吐く。
昔から悪戯の後には決まって頬を触られてきたために、ここまでが彼の意地悪なのだと、諦めの境地に達したのはいつだったか。大地が満足するのを待つ方が、うんと早い。
「……、っし。じゃ、俺先行くわ」
「はいは、いッた!?」
ふと手を止めた大地の解放宣言に、ようやくかと息を吐いた宙の頬が、限界まで引っ張られて指先から抜ける。ゴムを弾くようなそれに、宙は思わず両頬に手を当てた。
「油断大敵ー。じゃあな」
「ゆ、油断とかそういう話じゃない……!」
せっかく止まりかけていた涙が、またじわりと溢れる。痛みと悔しさで忙しない気持ちを嘲るように、大地の真っ赤な舌がしてやったりと笑った。
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