不器用な想い

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──おおかた18年。大地は、どんな気持ちで……。  かざした手が逆光に翳り、指の股から漏れる光がうんと眩しく宙の目を刺す。  細めたその瞳は、今までずっと大樹だけを見つめてきた。叶わないものだと分かっていて、叶えるつもりもなく、側にいられる日々を大切に思っていた。  溢れる想いを飲み込むのは辛かったけれど、変わらない笑顔を見ると安心もした。まだ自分は、彼にとって大切な幼馴染であり友達でいられている、と。  ずっと見ていたらしい大地の目に、そんな宙は、果たしてどんな風に見えていたんだろうか。  愚か。哀れ。……浮かんだ言葉はあまりに卑屈で、自虐的に口角が上がる。きっとそんな風に思っているのは大地じゃない、宙自身だ。 ──……、今。何してんだろ……。  吐いたため息に呼応するように、ぱたりと腕が落ちる。宙はゆっくりとその身を起こし、薄緑のカーテンをあけた。余韻に揺らぐのを視界の端に、鍵を開けて、ガラス窓を右に引く。 「風邪引くぞ。泣き虫」  しっとり濡れた髪を冷やす夜風に、聞き知った声が混じった。
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