泪の代償

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──これ以上は、贅沢になる。  行こうかと、普段通りに戻った大樹に促されるまま、歩き慣れた道を進む。  中学生の頃に自覚して以来、ずっと、大事に抱えながらも隠してきたこの想い。今更、打ち明けるつもりなんて微塵もないけれど。 「宙」  名前を呼ばれるだけで胸が疼いてしまうほど、好きなんだ。  幼馴染として隣にいること。他の人よりも少しだけ多くその優しさを受け取ることくらいは、許してもらえないだろうか。 「うん」  宙は溢れる愛おしさにきゅうっと目を細め、足を止めて待っていてくれる大樹の隣に駆け寄る。 「今日も暑いね」  少しだけ切なくも優しい日常を、夏の気配が色濃く残る9月の空が照らしていた。
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