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呉服屋
いつも行く商店街の中に、一軒の呉服屋がありました。
今は息子の紫呉さんが代を引き継いでやっておられるのですが、その前まで百合子さんという紫呉さんのお母さんが中心となって営んでいました。
旦那さんは着物作りの職人さんで、お店とはまた別の作業場で仕事をしていたそうです。
百合子さんは、いつも素敵な着物を召して接客されていました。
立ち姿も美しく、落ち着きがあって、親切で優しい人でした。
着付けがわからない人には優しく教えてあげたり、その人にあった色や刺繍の着物を選んでくれたりしました。
どうしても着物で出掛けなくてはならない時に、家までわざわざ着付けをしに来てくれることもありました。
値段も、旦那さんに直談判をして安くしてくれたりもしました。
ですから、常連の女性が数多くおられました。
私もその一人でした。
百合子さんは、着物のデザインもしていました。
花をモチーフにしたものが多く、配色も素敵で人気があったそうです。
そんな百合子さんが病で倒れてからは、紫呉さんがお店を切り盛りしているようでした。
まだまだ百合子さんの接客には遠く及びませんが、紫呉さんもとても親切でした。
ほどなくして、百合子さんは亡くなってしまいました。
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