第1曲目 第3小節目:仮面のうらがわ

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「ごめん小沼くん、アコギ取って来るの時間かかっちゃった!」  市川が教室に戻って来たのだ。  ああ、amane様......! 「って、あれ、吾妻さん? どうしたの?」  そう言いながら市川は、自分の机の上に置いてあるノートを見て、状況をなんとなく察したらしい。  おれを一瞥(いちべつ)し、演技がかった声で話し始める。 「あー、バレちゃったかあ。私、実は作詞とかしててさあ、そのノートなんだよね。照れちゃうなあ、もう」  おれをかばうために嘘をつきはじめる。 「別に、恥ずかしいものだとは、思ってないけど」  そんなフォローまで添えて。  なんだよ、市川。そんなかっこいいことすんなよ。   「......いや、違います」  うつむいたまま、くぐもった声で、吾妻がそう言った。 「え?」 「あたしの目はごまかせません! これは、amane様のコトバじゃありません! あたしが何千回amane様の曲を聞いたと思って......!」  机を叩いて立ち上がる吾妻。  椅子がその反動で倒れ、がちゃんと音を鳴らす。 「ええーっと......」  頬をかきながら、市川がこちらを見る。 「こいつ、amaneのファンなんだってさ」  おれは事実だけを述べる。 「ファンってか、信者だな」
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