第1曲目 第1小節目:出会い

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「......ほんとに?」 「ほんとに......」  ああ、やってしまった。  よりによって、あの市川天音にバレるなんて。  16時のチャイムが教室に鳴り響く。   「すっごく良い曲じゃん!」  ややあって、市川が大きな声で言う。  目を爛々(らんらん)と輝かせながら。 「小沼くん、作曲できるの?」 「出来るってか、やってるだけだけど」 「ええー、全然知らなかった!」 「まあ、誰にも言ってないから」 「どうして?」 「……誰にも知られたくないから」 「そうなの? 良いじゃん! 作曲出来るの、すごいのに! 本当に、すごい......」  何言ってんだ。  おれは自分の顔が赤くなっていくのを感じた。  原因は、照れじゃない。『怒り』だ。 「......市川だって」 「ん?」 「市川だって、作曲出来るじゃねえかよ」 「え......?」  市川の瞳が揺れる。勢いが突然なくなる。 「出来ない、みたいな顔してるけど、市川だって作曲できるだろ」 「いや、私は、弾き語りやってるだけで......」  (うつむ)く。 「作曲も作詞もできない、みたいな顔して他の人の曲ばっかやって」 「......どういうこと?」 「なあ、市川は、amaneなんだろ?」  市川がハッと顔を上げる。  唇がわなわなと動く。 「それ、知って...?」  こらえきれなくなった言葉が出てくる。 「知ってるよ。だって、おれは」  決して言わないつもりだった言葉が。 「あなたに憧れて作曲を始めたんだから」
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