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第1曲目 第2小節目:初めての帰り道
「とはいえ、おれは歌詞が書けない」
「え? でも、私も歌詞書けないよ?」
なんてこった。
おれは、新小金井駅までの下校道を市川と二人で歩いていた。
音楽的に、という枕詞がつくとはいえ、3年間も憧れていた女子との急接近に、おれの心臓はついてこれていない。
音楽の話をすました顔をしながらも、心中では「やべえぞこれは」となっていた。
学校から新小金井駅までの唯一の信号に差し掛かったところで、市川が手を叩いて言う。
「あ、ファミマ寄ってこ。アイス買ってこ!」
「お、おう」
なんだ、意識する心臓が止まらない。BPM90くらい。
テンポに直すとあんま速くなさそうだな。
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