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第1曲目 第3小節目:仮面のうらがわ
翌日。
同じクラスだから、何度か市川とはすれ違ったものの、お互いに会釈をする程度にした。
市川は自分が元amaneであることを隠していて、おれはおれが曲を作っていることを隠しているわけだから。
昨日までなんでもなかった二人がいきなり話をしていたら、周りは「ん? どうした?」と思うわけである。
そしたらきっと明るめのリア充男子が、
「んー? 天音、小沼くんと友達なん?」
みたいな感じで絡んでくるんだ。
いや、おれは決していじめられてはないぞ。地味で目立たないだけだ。
そんなこんなで放課後になる。
みんなが教室から出ていく。
約束とかはしていないけど、また曲の話をしようと思ったら、自分の教室で待つしかないだろう。
LINEの交換もしてないしな。
よくわかんないんだけど、普通、帰り道まで一緒になったら連絡先交換するもんなんじゃないの?
高校上がるときにやっともたせてもらったスマホのLINEには家族しかいないからわかんないっす。
おれは、わざと残っているということを悟られないよう、自分の存在感をゼロに近づけながら机でスマホをいじるふりをしていた。
すると、見事に誰からも声をかけられないまま、みんなが教室から出ていった。
うん、ステルス性能高い。
いや、もしかして、別に努力しなくても誰からも気づかれなかったんじゃね?
元から気配、ないんじゃね?
拙者、前世は忍者かもわかりませんね......。
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