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第1曲目 第4小節目:『日常は良い』
もはや隠していても仕方ないと判断したおれは、市川に許可を取ってから、かくかくしかじかと、経緯を報告した。
吾妻は市川の席に座ったまま、市川は前の席の椅子を吾妻の方に向けて座り、おれは横の席の机に半分座りながら寄りかかっていた。
「つまり、amane様は小沼の曲をamane様の曲として歌おうとしてて、これは小沼の作詞ノートってこと?」
「まあ、そういうことだ」
「amane様は、それでいいのですか?」
「あのさ、その、amane様っていうの、やめないかな? 普通に市川とか天音とかって呼んでくれたらいいから......」
信者モードが抜けない吾妻を、市川がそっとたしなめる。
「わかりま.....わかった、えーっと、天音......?」
小首をかしげる吾妻。
大きな瞳が小悪魔的な魅力を放つ。無意味に。
「うん、よろしくね、えーっと......由莉!」
「ぐはあああああ!!」
市川の呼び捨てが引き金になったのだろう。
胸元を抑えて吾妻がうつむく。
「えっと......」
困ったように頬を人差し指にあてながら市川がおれを見上げる。
なんだその顔。可愛いからやめてください。
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