失敗する余地のあることは必ず失敗する 1

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失敗する余地のあることは必ず失敗する 1

「まるでコミックのヒーローですよ!!」 「バットマンとかアイアンマンみたいな?」 「そうそう!でも彼は、カラテ!って感じだったから、ミラージュマンって感じですかね?」 「誰ですかその人?ここで一旦CMです」 とある朝のニュース番組 刺すような日差しの夏の朝。 引っ越ししたばかりと見まごうような何も無い部屋。一人の少年が寝ている。 彼はかなり体格が良い。鍛えているのだろう。そして身体の節々に痛々しい青アザを付けていた。 家具と言えるものは白のカラーボックスが3つとその上に乗っかったラジオ、あとは枕元にある目覚まし時計くらいだ。 壁にかかったハンガーには学ランがかけてあり少年が学生であるのがうかがえる。 目覚まし時計が鳴り、少年は目を覚ました。 時間と場面と視点が変わる。 生徒が登校してくる時間、人がまだまばらなクラスルームで、先程寝ていた少年、タダシは自分の席に着席し、両耳にイヤホンをし、目を閉じ音楽を聞いていた。 「なぁお前その傷どうしたんだよ?」 前の席の小川がふり返り、話しかけてきた。 小川はクラスで目立つタイプではないが、嫌われるタイプではない。お調子者で誰かと話しをするのが好き。なおかつ声がデカイ。無口なタダシに話しかける数少ないクラスメイトである。 タダシはイヤホンを外し視線を上げた。 「昨日階段から落ちた」 「いや!転がり過ぎでしょ!青アザだらけじゃん!!」 ノリの良い返しにタダシは黙り込む。 何かを察した小川は手をヒラヒラさせながら言う。 「いや別に俺に関係ある訳じゃないからなんでも良いんだけどさ?最近色々と物騒じゃん?昨日も近所で強盗があったって…そうそう!お前今朝のニュース観…てないか。お前の家テレビないんだもんな。えっと、待ってよ…」 小川はスマホを操作し、ニュースを表示させた。見出しには『まるでコミック!?仮面を被ったヒーローが強盗を撃退!?」と書かれていた。 タダシのお決まり鉄仮面は崩れ、目を見開く。 小川は嬉しそうだ。読んでいいぞとタダシにスマホを渡した。 「流石にお前でも興味惹かれたか!かっこいいよな!パンチ!キック!って感じで悪者撃退だぜ?さてはお前!昨日そのヒーローにボコボコにされたか?」 小川の饒舌は止まらない。それを聞き流しつつタダシは、そこで初めて、面倒ごとに巻き込まれない為に被ったヘルメットが想像より面倒なものを運んで来たと気づいた。
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