2 現代文明の課題

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2 現代文明の課題

技術と政策は、文明を支える二本の柱です。 そこで、この二本柱から、現代文明の課題と対策を考えたいと思います。 文明とは『高度な自然・社会科学的技術をもつ生活様式』ですが、 国家制度などの社会科学的技術は、人々の協力を効率化して、 制度・政策の実現を助けるものなので、 文明とは『高度な技術と政策をもつ生活様式』であるとも言えます。 生命活動は、生きるために必要な富(財、資源)を 作って分けることで営まれますが、 それは文明活動においても変わりません。 文明活動の本体は、全ての人が営む経済・社会活動ですが、 科学・技術は富を生み出し、それを豊かにするため、 制度・政策は富を分け合い、それを健全に保つために 分業化した活動といえます。 その視点から文明課題を分類すると、次のようになります。 (図では文章的に表現しやすい〝富〟を、 より学問的な〝資源〟と表現してあります。) e9f8c4ce-d93b-4154-befa-15a6793dfa36 ① 特定の資源が不足する資源枯渇。 ② ある資源の利用が他の資源を損なう環境破壊。 ③ 資源の分配が不適切となる貧困・不公正。 ④ 公正感覚の不足や食い違いから生じる戦争や犯罪。 これら4つの具体的課題は、6つの文明要因と同様に、 相互作用の関係にあります。 ①②の解決は富を生み出す科学・技術や、 それを助ける技術的政策によるところが大きく、 ③④の解決は富を分けあう制度・政策や、 それを助ける社会工学的技術によるところが大きいです。 文明発展の歴史とは、以上のような問題を、 技術と政策により解決してきた歴史であるといえます。 第一に、技術について言えば、重要なのは、 文明の発展段階を分けるような画期的技術です。 それは、全く新しい分野を(ひら)くと共に、 多くの在来技術の生産性も高めるような、 〝新規性〟と〝多能性〟をもった、 いわば文明発展上の主力技術です。 農業技術は体外物質、すなわち道具や器械の利用を通じた 食料供給や都市建設によって、文明を生み出しました。 工業技術は、体外エネルギー、すなわち動力機関の利用を通じた (パワー)速度(スピード)の恩恵によって、文明を世界規模に拡大しました。 情報技術は、体外情報媒体、すなわち電算組織の利用を通じた 制御(コントロール)の提供、効率化によって、地球的限界への到達の衝撃を緩和しました。 しかし、人類文明はまだ、地球という空間的限界のなかで、 時間的な持続を見通せる技術をまだ十分には得ていません。 第二に、政策については、4つの課題があります。 ① 科学・技術の具現化に必要な材料・エネルギー資源や、 生産施設、輸送手段、通信設備など物的資源の持続可能性。 ② 制度・政策を企画・実施・活用・改善に必要な、 人々の健康や教育という人的資源の持続可能性。 ③ 富の再生産と富の再分配を両立させ、 景気過熱や不況を防げる経済・社会活動の持続可能性。 ④ 政策の国際化など巨大化や、民主化など分権化という、 文明の発展に応じた制度・政策の持続可能性です。 文明の発展には技術、維持には政策が不可欠です。 科学・技術が経済・社会活動を豊かにしても、 その経済・社会活動を健全に保てる制度・政策がなければ、 文明を発展させ続けることはできません。 しかし、ある文明段階において政策が利害調整を極めたら 次なる主力技術を得なければ、さらなる進歩は望めません。 現在における政策課題は、文明発展の循環(サイクル)からみて、 従来の技術の限界がもたらすものなので、 次世代技術を開発したうえで、それらを活用し、 課題を解決できる政策が求められます。
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