ヘタレ義父と俺

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 母はしばらく休学したものの無事に大学を卒業、今の会社で朝から晩までバリバリと働き始める。俺は、どちらかというと時間に融通の利く父と過ごした時間の方が長かった。ような気がする。  父は生まれつき少し老け顔で、目が大きくて童顔な母とは全く顔つきが違う。性格も、サバサバして人の二倍速で動き回る母とは異なり、思慮深いというか、とても静かだ。俺は自他共に認める母の「生き写し」で、父とはまるで似ている所がない。父と長くいたからか、母よりは少しスローに生きているとは思うが、友人にはいつも「歩くのが早い」と怒られている。 「はい、これ、誕生日プレゼント。ネクタイ」 「ありがとう。うわ、バーバリー…」 「成人式用のスーツはまた今度見に行こうね」 「いいよ、入学式の時のあるし」 「駄目よ、あんたまた背が伸びたでしょう」  ねえ? と母が父を見上げると、父は小さく笑いながら頷いた。 「この間大学で見かけた時驚いた。一緒にいる西村くんがまた小さく見えたから」 「そりゃ西村が小さいからだよ」 「それだけじゃないさ。朝歯磨きしてて彰人がくると洗面所が暗くなる。父さんもそろそろ抜かれるかもな」 「えー…」     
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