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十八歳の誕生日の時もそう思って待っていた。でも、何もなかった。
静かな音と共に、寝間着姿の父が入ってくる。
「もう寝る所だったか?」
「いや、まだ早いしどうしよっかなって思ってただけ。どうしたの?」
「これ」
片手にグラス、もう片方の手に缶ビール。
「えっ、ビールじゃん。いいの?」
「母さん、飲まないからな。寝てからこっそりしようと思ってたんだ。彰人の加減がまだわからないから、少しだけな」
「やった。でも父さんもそんなに飲まないのに」
「今日くらいは飲むさ」
父は半分までビールを注いだグラスを軽く上げた。
「二十歳の誕生日、おめでとう」
「ありがとう」
乾杯。
カチン、とグラスをあてて、少しだけビールを含む。
父も一口だけ飲むと、「ここいいか」とベッドに腰かけた。
「さっきも言ってたけど、本当にスーツは新しいものを買った方がいい。背も伸びたし、バスケ、まだ続けてるんだろう? 体つきがまた少しがっしりした」
「そうかなあ。自分じゃよくわからないんだけど」
「そうだよ。ちょっと華奢だと思ってたけど、すっかり大人の男になった」
ふうっ、と、一息。
「大人として、彰人に聞いてほしいことがある」
俺は黙ってうなずいた。
父はグラスを持たない手でがしがしと頭をかく。
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