ヘタレ義父と俺

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「放っておけなかったんだよ。うちの学生だってわかってからも、香織が復学してからも、大学にばれないようにお前のお守りをしに行ったりしてた。色々大変だったんだが……まあ、その辺はいい」  手の中でビールがぬるくなっていく。  大体思っていた通りだったが、少しだけ違った。俺は二人がもっと早くに知り合っていたのだと思っていた。  この人は、ほぼ他人の母を助け、全くの赤の他人と母の子である俺を育ててきたのだ―― 「だから、な」  父は手元のビールに目を落としてから、もう一度俺を見た。 「もう知ってたのかもしれないけど、俺はお前とは血が繋がってない。これがまず聞いてほしかったことだ。それから、血が繋がっていなくても、これからも父という立場で彰人をサポートすることを許してほしい。これは香織にも言ってある」  目頭がじわりと熱くなってくるのを感じる。  父は少しだけ困ったように笑った。 「本当は香織の言う通り黙っててもよかったんだろうけどな。でも俺はきちんと伝えて、彰人に決めてもらうのが筋だと思ったんだよ。どうだろう、嫌だというのなら無理は言わない。こんな赤の他人のオヤジと住みたくないっていうんだったら出ていくし――」 「い、嫌じゃ、ない、です」  俺はこみあげてくるものを必死で飲み込みながら言った。  この人は何というか――いやもう、何という人なんだろうか。     
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