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何だかはぐらかされた気がして、俺は父を引き留めた。
「いや、いいんだ、よく考えたら彰人に聞くべきことじゃなかった。忘れてくれ」
「はあ? なんなんだよそれ。大人としてとか言っといて。気になるし、忘れるとか無理だから。教えてくれないなら毎日聞くからね」
「ええ……」
それは困ると思ったのか、父はもぞもぞとベッドに座りなおした。
「ええと……これこそ、その、大人の男として聞くんだが」
「うん、どうぞ、何でも聞いて」
「もしいやだったら答えなくてもいいんだが……」
「うんうん、わかったわかった。で?」
「その、母さんは……香織は、どういう男が好きなんだと思う?」
――……は?
ぽかんとした俺に、父は「だから聞きたくなかったんだ」と言わんばかりに頭を抱えた。
「え、なにどゆこと? 男?」
「いや、もう本当にいいんだ……」
「待って待って行かないで、どういうことなわけ? だって父さんは母さんと結婚し」
「してない」
「はぁ?!」
新事実、発覚。
父はきまり悪そうに頭をかいた。
「それは気づいてなかったのか」
「知らないよ、だって俺たち名字一緒じゃん! 母さん一人っ子だし、父さんが婿になったんじゃないの?」
母の実家の表札は、「佐藤」だ。
「あぁ、俺も元々「佐藤」なんだ」
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