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「え! マジで?」
「マジだ。そうか、俺の実家いったことないもんな」
「そういえば……」
「ちょっと遠くてな。まあ今度の夏休みにでも行くか」
この際それはいい。いやよくもないけど!
俺は自分の盛大な勘違いに頭を抱えたくなった。
「香織が大学を卒業した時、籍を入れようって言ったんだ。でもいらないって突っぱねられて」
「なんで……」
「いい人がいたらその人と結婚しなさいな、私も他にいい男が見つかったらそっちにいくから、ってさ」
母よ……!
「ちょっと俺、母さん起こしてくる」
「こらこらこら、いいからいいから。まあ、名字も一緒だし、書類だけ気を付けたらお前に不審がられることもないから、結局やめにしたんだ。最近の学校は結構そういうことにも気を遣ってくれるしな」
「いやいやいや、よくないって! じゃあ父さん今ただの同居人ってことじゃん!」
「ま、まあそれはそうだが……いずれ面倒になって籍を入れよう、って言ってくれるかと思ったんだよ……」
確かにこれまで学校に提出する書類系をまじまじと見たことはなかった気がする。
しかし、こんなに良くしてくれる人に、「他にいい男が見つかったらそっちにいくから」とはどういう料簡だ!
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