第一章 裏切り

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都会の雪は積もらない。 積もっても芝生に薄っすら積もるだけ。 カーテンの隙間から差し込む朝日が丁度目の辺りに掛かって眠りを妨げる。 冬の朝の冷えた部屋に温まっていた身体を出して 脱ぎ散らかされた服を集めて着はじめる。 「んー……」 『昨日まで彼氏だった 今はもう他人の男』は まだ起こさないでくれと言うように、背を向け 寝返りをうつ。 そんなことはお構いなし。 窓に近づき、細い隙間から顔が出せるぐらいの隙間までカーテンを開ける。 顔を出したばかりの太陽に目を細めながらも 冬の街の朝の景色を堪能する。 少し霧がかった朝靄に数台の車、まだ薄っすらと灯る街灯、建物の屋根には白い雪。 静かな冬の朝だ。 ガラス細工のテーブルの上に鍵を静かに置いて、 寝返りを うって顔を見せてくれないかなと、彼の背中を見つめるも想いは届く事はなく、その背中に小さく手を振って部屋を出る。 太陽が昇ったばかりで、 まだ冷えきっている外の世界。 吐く息は瞬時に白くなり、呼吸に合わせて煙のように揺らぐ。 深く深く冷たい息を吸い、深く深く白い息を吐く。 大丈夫。もう終わった事。大丈夫。 自分に言い聞かせ、一歩を踏み出した。 自分の10年感が何だったのか、愛がなんなのか 今の私には分からない。 ただ、こんなにも辛く、悲しく、情け無く、疲れてしまうのであれば 私はもう 恋はしないと心に決めた。 薄っすら雪が積もった芝生を見つけ ほら、やっぱりこんなもんと小声で呟いた。 早すぎる冬の朝、行き交う人は誰もいない。 暗い中では綺麗に輝くイルミネーションも 心が躍るような音楽とリズミカルに点滅しながら 私達の目を楽しませてくれるツリーも まだ眠っている。 誰の足跡も無い綺麗に敷かれた白い芝生に足を踏み入れて歩いてみる。 後ろを見ると自分の足跡が続いてる。 何故かそれが楽しくて、次々と現れる足跡を見ながらゆっくりつと歩き続けた。
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