はじまりの朝

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  少しだけつづき……… 前頁A:  アリシア=オーランド:十五歳、プレシティン魔法学校魔法道士科六年生 前頁B:  マルス=パレッタ:十五歳、プレシティン魔法学校魔法銃士科六年生 ―――◆◆◆◆◆――― 「きゃあああっ!!」  雪を振りまく灰色の空の下、魔法実技の試験会場となっている校庭の真ん中で、アリシアの悲鳴が響いた。腰砕けにへたり込んだ彼女の前方、十メートルほど先の地面には、彼女が展開した召喚魔法陣が、白く、猛烈な光を放ち続けている。  その光景は当然、校舎の窓から幼馴染みのアリシアの試験の様子を眺めていた、こちらは筆記試験中のマルスの目にも飛び込んだ。  小型の精霊を召喚する魔法試験であるはずなのに、魔法陣の大きさが異様なまでに大きい。窓から差し込む強い光に、他の生徒達も外を見てざわめきだす中、跳ね上がるように椅子から立ち上がったマルスが叫ぶ。 「アリシア!!」  それは奇妙な光だった。猛烈な輝きを放っているのに、視覚は眩しさを感じないのだ。へたり込んだまま、その光を愕然と見詰めるアリシアに、彼女を遠巻きに囲む生徒の輪を背にした、女教師のロギンスが大きな声で呼び掛ける。 「オーランドさん、動けるなら早くこっちへ!」  生徒達もロギンスもこの魔法陣が発生した直後から、縫い付けられたかのように、体が全く動かせなくなっていた。そのためロギンスもアリシアに声を掛ける事しか出来ない。だがその声もアリシアには届いていないようだ。輝く魔法陣を見詰めたまま、アリシアはうわごとのように呟いた。 「なんで…」  なんでこんな事になったんだろう―――自分には、こんなに大きな魔法陣を立ち上げる力なんて無いのに…と、アリシアは混乱の只中にあった。  すると突然、それまで魔法陣が放っていた白い光が、真っ黒な渦へと変化する。さらに渦の中心から紫の稲妻が何本も走り出した。おどろおどろしい急変に、生徒達が怯えた声を上げ始める。渦の一番近くにいるアリシアは、身がすくんで言葉も出ない。  やがて渦の中心から大きな緋色の目が一つ出現した。爬虫類のそれを思わせる、縦長の黒い瞳孔が瞬いてギロリとこちらを睨む。 「!!!!」  その瞬間、アリシアは迫り来る死を感じた。だが体が動かない、逃げられない。同級生達も、強力な魔法道士のロギンスも、アリシアを救いたくとも体を動かせずにいる。  
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