3人が本棚に入れています
本棚に追加
翌年、また同じようなことがあり、店長は綱島さんの奥さんに相談したそうです。
すると、綱島さんの奥さんは何度も謝罪しながら、店にやって来てチョコレートケーキを買って行きました。
「あの人が、私のために予約してくれたケーキ。来年ももしあの人から予約の電話が来ましたら、お知らせください。私が買いに参りますので」
奥さんはそう言ったそうです。
それからも毎年、12月半ばになると綱島さんから予約の電話があり、奥さんが取りに来るのだと、カンナは私に教えてくれました。
私はレジの横を確認すると、血のついた紙幣はなくなっていました。
カンナは綱島さんの奥さんに電話をかけると、三十分ほどして穏やかそうな奥さんがやってきました。
「毎年、ご迷惑かけてごめんなさいね」
そう言って、チョコレートケーキを買って行きました。
クリスマスケーキは大きくて、一人で食べきれるのだろうか、と余計な心配をしていると、カンナは「心配いらない」と言いました。
クリスマスイブには息子夫婦と孫が家に遊びに来て、孫も大好きなチョコレートケーキを囲んで楽しく過ごし、その一番いい席には綱島さんの写真がいつも飾られるそうです。
最初のコメントを投稿しよう!