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すると、カンナがちょうど厨房から出てきました。
手提げ袋を持って立っている私を、不思議そうな顔で見ていました。
「どうしたの?」
「今、チョコレートケーキを予約したお客さんが来たんだけど、包装しているうちに居なくなっちゃって」
「その予約したお客さんって、誰?」
「それが、電話予約だったんだけど、電波が悪くて結局名前がよく聞き取れなくて。何とか島さんっていう、60代ぐらいの会社員っぽい男性だった」
「そっか。ごめん、忙しくて教えるの忘れていたよ」
カンナは帽子を取ると、その男性について話し始めました。
その人の名前は綱島さん。
入院している店長の話では、綱島さんは昔からの常連さんで、誕生日や記念日にはいつも電話で奥さんが好きなチョコレートケーキを予約していたそうです。
とても仲が良いご夫婦で、日曜日になるといつも二人で商店街を歩いていたそうです。
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