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その中で、今はシャッターが閉まり営業をやめてしまった店に噂はあった。
かつて、小さな宝石店だった店。
店主は細身で気の弱そうな年配の男性だった。
店内はひときわ照明が明るく、強化ガラスのショーケースに飾られた宝石がいつもキラキラ輝いていた。
商店街に訪れる人は、必ずといっていいほど、その光に目がいくという。
値段もリーズナブルで、購入している人の姿をよく見かけたらしい。
そんな宝石店は、ある日を境に閉店してしまった。
原因は、五年ほど前に起こった強盗殺人事件。
店主は閉店準備で片づけをしている最中に、背後から強盗に襲われた。
刃物で刺され、店内にあるほとんどの宝石を強奪された。
すでに電動シャッターが半分以上閉まり、外からは見えない状況で犯行が行われた。
だが、犯人はすぐに捕まった。
当時、雇っていたアルバイトの犯行だった。
それからすぐに、店は廃業となった。
噂は、それから少しして生まれたという。
店主が亡くなり宝石店が閉店してから、ずっとシャッターが閉まっている状態になった。
新しい店が入るわけでもなく、テナント募集もなく、放置されていた。
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