0人が本棚に入れています
本棚に追加
なぜか身体中からエネルギーが沸いてきたような感覚になり、
生きる喜びを、再び美しく咲き、儚く散ることができるのだと、愛しい人は私に教えてくれたのです。
毎晩、きっと、今夜もどしゃぶりの雨の中、花が一つもない桜の木の下で愛しい人は私を待っているのです。
一目逢うだけでいいと、愛しい人は身をぼろぼろにしながら言葉なく、微かに肩を震わせながら待っているのです。
いつか、生まれ変わった時、再び会えることを今は祈りたいだけなのだと、そう言って静かに、雨の音を聞きながら、涙を流さずに泣いているのです。
貴方、お願いです。これは明日への遺言です。
私の可愛い息子に伝えてくださいませ。いつも、これからも永遠に母はあなたを愛しているのだと。
何処からでもどんなことがあっても、遠い天国から、母は必ずあなたを守って見せますと……。
幸せになってくださいと……。母は全ての思い出を忘れないでしょう……と。
朽ち果てていく桜の木の下で私を待つ、あの愛しい人に伝えてください。
私は明日、泡となり、消えていくでしょう。
これは定められし、運命なのです。だから悲しまないでと……。
「私の骨の一部をそばにおいてください」
と……そう、愛しいあの人に伝えてくださいませ。
いや、そんな贅沢な願いはできません。
一度だけあの愛しい人の手に触れることができただけで、私は十分です。
何も伝えなくて結構でございます。。。
愛しい人の手の甲の温度と、あのしおりの味を思い出せるうちに消えてしまいたい。
いつか一緒に見たあの雲のように幸せのまま流れていきたい。
最初のコメントを投稿しよう!