高校一年のバレンタイン

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 「お風呂に入るとこだったんです。出てからゆっくりいただきます。  本当にありがとうございました」  「時間がない。カレ氏と約束してる。じゃあ」  遠野さんは階段を駆け下りて行った。  ガトーショコラの箱をテーブルに置く。服を脱ごうってしたら・・・  家の電話が鳴る。祖母から・・・  駅前のスーパーに買い物を頼まれた。  ジャンバー羽織って階段下りる。  急に大きなくしゃみ。  why?  カレ氏との約束の場所へと急いでるはずの遠野さん・・・  自転車置き場に立ってた。  ものすごく寒そう。鼻水すする音。  「遠野さん」  声かけたら、跳び上がって驚いて、最後は着地でよろけた。  「なにしてる?お風呂は?」  遠野さんったら、いきなりプライベートなこと聞いてきた。  「祖母から買い物に行くよう言われて・・・」  「仕事のことで電話が入った。  すぐに解決しなければならない問題だった。  じゃあ」  テキパキ言って、僕の前から消えた。  ぜんぜん関係ない人の自転車の荷台。カレ氏へのガトーショコラが入った紙袋。  遠野さんの携帯番号、一応教えてもらってた。今日、初めてかける。  「遠野さん。チョコ、忘れてますよ!」  しばらくして低く沈んだ声。  「そこに置いといて。すぐ取りに戻るから」  「急いでるんでしょう。僕、持っていきます。どこに持ってったら・・・」     
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