高校一年のバレンタイン

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 遠野さん、なにも言わなかった。  すぐ信号になった。  信号のところで遠野さん・・・  なんにも言わずに右に曲がった。  「行ってらっしゃい」 って呼びかけたら・・・  思い出したみたいにこっちを向いて、  「行ってらっしゃい」  なんだかムッとした表情。すぐに背中を向けた。  こんな感じで、たまに緊張したこともあった。  そんな日常の中で迎えた高校一年のバレンタイン。  二月十四日の朝。一緒に家を出たけど、バレンタインの話は出なかった。  高校に入ったって、バレンタインは変わらない。  僕、机に座ったまま、「忍」に徹した。  高校の三年間・・・  二月十四日って・・・  日曜日でも土曜日でもない・・・  一年目の一日が終わった。  ふくれあがったトートバッグを肩から下げてるクラスメイト。  二、三個のチョコレート。スクールバッグに楽々入るはずなのに、わざわざ手に持ってるクラスメイト。  なんかムカつく。  なんにも興味ないふりして教室を出た。  チョコレート一個(まちがいなくギリチョコ)手にした浜島君。僕の肩をいきなり叩いた。  「怒るな!オレを恨むな!」  見抜かれてる~  六時過ぎ。  自宅のチャイムが鳴った。  「松山君。いる?」  聞き覚えのある声。  ドアの向こうに遠野さん。     
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