止まっていた刻。

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「分かりました」  答える千里の声で会話を終える。暫く佇んでいると、其処に同じく城に仕える者が二名やって来た。晴臣と千里へ頭を下げる二人。 「晴臣様、千里様、例の件で蒼士(ソウシ)様よりお話が……一琉様の護衛、暫し我等が引き受けまする」  晴臣と千里を呼び寄せたのは、蒼士であった。一琉に仕え、親代わりでもある蒼士も其の顔へはそろそろ皺も目立って来た。しかしながら、厳格な雰囲気は変わらず、二人の心を引き締める。其の上へ座すると、一琉が狙われた際に放たれた矢を二人の前へ静かに置いた。 「晴臣が持ち帰った矢だが、此の矢は恐らく夕霧の国で作られたものだ」  静かに、神妙に語られた声に、晴臣と千里も表情を硬くさせる。夕霧の国とは、此処、葵の国の隣国で、過去より所有領土に関する戦が度々起こっていたのだ。一琉の様に影武者を置き、後継者を守る慣わしも此の隣国との不穏な空気間が多いに関係していた。しかし、此処数年は此れと言った大きな動きも無かったのだが。 「では、夕霧の国から刺客が……?」  訊ねる千里へ、蒼士も深く息を吐きつつ腕組みする仕草。其の眉間へは皺が寄る。 「まだ断定は出来ぬが……現在、夕霧の国とは僅かながら貿易もある。此の矢は、我が国にも無いものではない」 「我が国で、一琉様を狙うとなると……」  続き、晴臣が呟くと、蒼士は重い口を開いた。 「夕霧の国へ目を向けさせた、御家騒動の可能性もあるな。上様には他側室の御子も……其の中で、後継者とした若君の姿と其の居場所を身内にすら明かしておられない……可能性は其の何れかの見方だ。又情報が入り次第知らせる……一琉様へは、当分庭にも出られぬ様にと、頼んだぞ」  神妙な蒼士の言葉へ、二人が拝する。 「御意」
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