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一琉の元へ戻り、状況を説明した晴臣と千里。暫く、庭にも立てないとの話に神妙に頷いた一琉。
「――そうか……若君の方へは、何も影響が無ければ良いけど……」
溜め息混じりに、深刻な状況を憂える一琉。膝の上には福が、其の心地好い掌にうっとりと目を閉じている。
「暫く、退屈でしょうが……」
晴臣より、少々気遣いながら出た言葉に笑う一琉。
「部屋で大人しくしてるよ。ね、福」
福を撫でながら、素直に受け入れる一琉の返事に、晴臣と千里は複雑な表情を浮かべた。しかし、此れが影に生きる一琉の本分。致し方あるまい。
「若、退屈でしたら御呼びを。話し相手位にはなれますので」
「千里の話は面白いもんね。うん、有り難う」
二人のそんなやり取りに、晴臣は僅かに眉を寄せた。己も何か言うべきかと考えてみるが、一琉と会話が弾んだためしは無い。結局何時もの如く、そんな二人のやり取りを聞くだけ。だったが。
「晴臣、私が動かなければ先日みたいな事もそうないよね。無理せず、傷を治して欲しいな」
ふと、一琉よりそんな言葉と共に笑顔を向けられ、晴臣も思わず表情が和らぐ。
「有り難う御座います」
そんな晴臣の表情に、一琉は声無く少し俯いてしまった。此の雰囲気に、千里が口を開いた。
「大丈夫です。お次は私が若の為体を張ります故」
千里を横目に睨む晴臣だが、一琉は複雑そうな苦笑いをみせている。
「有り難う……でも、誰も怪我をして欲しく無いんだけどな。それに、二人程じゃ無くても女子程か弱くも無いさ」
そうだ。一琉は、守られるだけではいけないと幼い頃より武の鍛練も懸命に取り組んで来た。元々武士の家系、其の努力もあり、剣術の腕はかなりのものではあるのだ。
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