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「しかし、我等は其れが此処にいる意味でもありますので……では若、怪我をしたら膝枕宜しいでしょうか?」
晴臣は此の発言に驚き、声無く千里へ顔を向けた。
「膝枕?」
一方の一琉だが、只目を丸くして首を傾げている。
「はい。傷の治りも早くなりましょう」
続いた千里の言葉に、一琉は呆れる様な苦笑い。又可笑しな事を、と。
「私の膝より、女子の膝のが柔らかくて良いと思うけどなぁ……」
「体を休める枕には、程良い硬さと高さが必要なので。若は良い膝をお持ちだ」
透かさず、最もらしい語り口と表情で意見した千里へ一琉は妙に説得力を感じた。此処が一琉の長所であり短所でもある。素直で純真は結構だが、人が良いと騙され易いという事にもなる。しかし無理も無い、立場上殆ど世間を知る事無く今に至るのだから。
「成る程、そうなのか……分かった。ずっとは流石に辛いけど、協力は惜しまないよ」
真剣な眼差しで、強く頷いた一琉。信じてしまった。晴臣は千里への腹立たしさに眉を潜めている。青筋も見えそうだ。
「では晴臣殿、本日早速御協力頂いては如何ですか?」
「なっ……」
意外な提案を振られ、晴臣は言葉に詰まった。戸惑う晴臣へ、一琉は少し照れながらも笑っている。
「あ、晴臣……私で構わないなら……今日はゆっくりすれば良いし」
「えっ……あ、その……」
一琉の膝で寝る等と言葉に迷う晴臣。そもそも、今現在は勤務中でもあるのだ。堅物な晴臣には其方も気になるわけで。そんな晴臣へ千里が溜め息を吐いた。
「晴臣殿は柔らかい枕がお好みか。ならば、必要ありませぬな」
「か、硬めを使っている」
思わず出た声は少し強くなってしまった。
「へぇ……」
呟き、口角のみを上げて笑む千里が腹立たしい。
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