止まっていた刻。

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「……私が言えるのは、其れ位しか無いので」  そう言って、晴臣がゆっくり体を起こした。首を傾げる一琉。 「晴臣?まだ足は痺れてないから、大丈夫だよ……?」 「良い硬さ、高さでした。傷は、直良くなりましょう……有り難う御座います、若」  晴臣は一琉へ向き直ると、礼を述べ柔らかに微笑んだ。一琉はそんな晴臣へ大きく鳴る胸の音に驚く。又俯いてしまった。腰を上げて襖へ向かう晴臣の足音。 「あ、あの……!」  振り返る晴臣。呼び止めたものの、続く言葉が見付からない。又俯く一琉は、手元の袴を握り締めた。何故、己は何時もこうなのだろうと。 「暇でしたら御呼びください……話相手が、私で良ければ」  優しい其の言葉に顔を上げる一琉。瞳には、再び背を向けた晴臣が映った。程無く静かに閉じられた襖の音。ほんのり火照った顔で、襖を見詰めている一琉の膝へと戻って来た福。催促しても中々来ない掌に、福は拗ねた様に寝入ってしまった。
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