0人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
キキキッと甲高い金属音がなって、鍵か開く。
天井からキイイーーンと嫌な音がなり、頭上を見上げる。
天井の丸いスピーカーから、落ち着いたトーンの女性の声が流れる。
「只今より、BWO新入研修生への初回研修が行われます。研修生は速やかに、中央の広場に出てください」
「中央広場は途中に通りかかったあの場所だ…」
外の廊下へ研修生と思われる少年少女が出て来る。
中には駆け出す者も居る。
多くの者が緊急した表情をしたまま歩みを進める。
目の前の扉が開いて、中から一人の男が出てくる。
黒い長袖のジャージに紅いライン。
前髪は長いが短髪の男。
何か殺気だっていることがわかるしかめっ面の細身の男。
「(やばそうな人だな…)」
ゆっくりと彼も中央広場の方へ歩き出す。
「(あんな強そうな人と一緒にこの組織でやっていくことになるのは嫌だな)」
中央広場には中学の名前が沢山掲げてある。
匠は宇治中学校名前の掲げられた場所に並ぶ。
正面には少し高台になった足場が設置されている。
自分の後ろには
牧本 叶
金糸雀 頼
山中 結衣
右京 沙苗
と昨日のメンバーが揃って並ぶ。
「舞潟くん、どうかしたの?なんかさっきより顔色悪くない?」
「ああ、色々あってね…」
「私も流石に緊張してきたよ。さっきカタミ キョウスケっていう人に声をかけられてね!『女でも関係なく叩きのめされるから気をつけろ』ってね。」
匠はドキッとした。
キョウスケ…。
さっきの背の低い少年だとすぐに思った。
「実は俺もさっきその人に助けられてさ」
「舞潟くんも?キョウスケって人何者なんだろう。私の名前を知ってたよ。マキモトカナエって最後に呼ばれたと思ったら『ま、適当にうまくやれよ』って走って行ったの」
「(そういえばそうだ。彼は俺の名前を呼んだな)たしかに。俺の名前も知ってたよ」
「そんなことより舞潟くん今日から宜しくね!」
明るい叶の表情の隙間に緊張を含んだ感情が見え隠れしているのがわかった。
それでも優しい態度を取り続ける叶に匠は心を温められているような感覚を持った。
その後、彼女は後ろに並んだ彼らにも軽く挨拶をすませると前を時々確認しながら、右京 沙苗という少女に声をかけて喋り始めた。
最初のコメントを投稿しよう!