変化

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 その時、一人黙ってニンニクスライスを焼いていたマスターが下を向いたまま話し出した。 「そうだったんですか……。ひかりちゃん亡くなっちゃったんですか……。いい子だったのに。礼儀正しくて、いつもみんなの気持ちを考えていましたよね」 「えっ? そんなことまでわかっていたんですか?」とお父さんが無理矢理笑顔を作って応えた。 「ええ、私も一応客商売をしていますし。ひかりちゃんは小さい頃から来てもらっていましたしね。ホントとても優しい、いい子でした」  ニンニクスライスの焼け具合を調べていたマスターが、ふと顔を上げお父さんに向かって言った。 「雨宮さん」 「はい」 「後悔って、しても仕方のない事がほとんどですが、雨宮さんはこの後悔をこれから役に立てる事ができますね」  お父さんは少し考えた後、ゆっくりと頷き複雑な表情をして微笑んだ。
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