マスオさんの憂鬱

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マスオさんの憂鬱

 今日の俺は全然ダメだ。  草野球の試合で、チャンスに打順が回ってきたのにことごとく三振。 「どうしたんですか。集中できてないですね」 「昨日、嫁さんとお義母さんがまたケンカしてさ」 「板挟みですか。『マスオさん』も大変だなぁ」  二世帯住宅を買ってもうすぐ一年。  義理の両親は一階、俺たち夫婦と二人の子供は二階。食事も風呂も別々だが、お義父さんの退職金を頭金にした関係で、俺は若干遠慮がちに暮らしている。  妻と義母は、毎日どうでもいいことでケンカをする。  昨日のケンカの原因は『鬼のパンツ』だった。  妻と下の息子が「♪鬼ぃのパンツはいいパンツ」と歌っていたら、お義母さんが文句を言いに来た。 「正しい歌詞を教えなさいよ。『フニクリ・フニクラ』の歌詞は、♪赤―い火をふく あの山へ 登ろう、でしょ」 「はぁ? なに、それ」  そんな感じで険悪な雰囲気になった。  君子危うきに近寄らず、と思っていたのに、試合後、打ち上げの席でほろ酔いになっているところに義母からメッセージが届いた。 『大事な用があるのでうちに寄ってください』     
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