バイク便屋は運びたい

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 今朝はとても寒かった。そして、眠ったままの相棒はいくら起こそうとして蹴り飛ばしてもウンともスンとも言わない。約束の時間まであと僅かなのになぁ。遅刻しちゃうねぇ、コレは。  もう、このままキックスターターを蹴っていても大事な相棒であるレトロなバイクが壊れるだけだ。まあ、今日のお客さんなら徒歩でも大丈夫な荷物だろう。少し遅くなっても怒りはしない人だと思うけど、問題は……。 A:「あらバイク便屋さん、今日は自慢のバイクじゃないのね、珍しい。」 B:「今朝の寒さで動かなくて置いてきたんですよ。」 A:「あら大変。それは遅れちゃうわけよね。待ちきれなくて屋台で買っちゃった。」 B:「美味しそうですね、そのとっても大きなホットドッグ。」 A:「じゃあ、お荷物を……さあ、私から奪ってみなさい、鬼ゴッコよ!」 B:「その様子だと、また簡単には運ばせて貰えそうにはないですね!」  ホットドッグを平らげると同時に、お客さんは寒い街の中を駆け出した。僕も夢中で彼女を追い駆ける。この人は毎回こんな感じで、簡単には荷物を渡してくれない。 A:「……まだ捕まえてくれないの?もう小一時間は走っているわよ。」 B:「なかなか荷物が、ねぇ。」 A:「もう大丈夫だと思うんだけど?」 B:「あのホットドッグ、少なく見積もっても600キロカロリーくらいありましたよ。」 A:「どれぐらいかかりそう?」 B:「もう、こんなの走っているうちに入りませんから、小走りで3時間くらいじゃないですかねぇ。」 A:「そのバッグで運べる重さの荷物なら何でも運んでくれるって言っていたじゃない!」 B:「じゃあ、早く渡して下さいよ、お客さんの無駄な体重。」 A:「ぐぬぬ!」  結局、それから二人で映画見て、その後に彼女がカフェでケーキを頬張ったので、今日も荷物は運べなかった。自分で運んでって頼んできたのにねぇ。相棒の面倒は明日診てやるしかないなぁ、しょうがない。                    完
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