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窓の外から雀の麗らかな鳴き声と対照的
に、けたたましい車のエンジンを吹かす音が聞こえている。どこから音がしているのかと、窓の外を思わず見回した。すると、ボンネットの木の葉を払い、細身で背の高い見覚えのある若い男が俺の家の玄関のほうに向かっている、姿形から推測するに優だろう。間違いなく。こんな朝っぱらから何しに来たんだろう
『ピンポーン』
『優だろ。どうしたんだこんな朝っぱらから』
『頼みがある、一緒に人を探してくれないか?両想いになりたいんだ。』
『まさか知り合いが誰か行方不明なのか?』
『違うんだ、実は電車の中で一目惚れをしてしまって。寝ても覚めてもその人のことを思い出してしまうんだよ。』
『はあ。それで今日ここに来たのか?』
『うん』
『うんってそんな時間がかかること俺に出来るかなあ』
『頼むよ』
『仕事も最近忙しいしなあ、無責任に引き受けても後々嫌になるし』
『この写真がわかるか?二枚ある。』
『おい、隠し撮りしたのか?』
『うん。』
『うんって。』
『一枚は俺が一目惚れした人。二枚目はお前の元カノのみきちゃん。忘れられないんだろ?』
『?????????これどこで撮ったんだ?』
『さあどこでしょう、教えてあげるから、一緒に探してよ』
『おおう。わかった、まあ中にはいれよ。今日休みだし。』
『ありがとー』
俺は、優を何度か呼び入れたことのある奥の部屋に
通した。奥の部屋へは長い廊下を通った階段のしたにある、その木漏れ日の入る小さな部屋は小さい頃から優と一緒にテレビゲームや人生ゲーム、新聞紙を丸めて、バット代わりにして、ピンポン玉をボールにして、バッティング遊びもした。野球のカードゲームは数え切れないほど優と一緒にしてきた。今のところ、あの頃と変わったところは、雑誌の数が増えたり減ったりするだけで、あとは何も変わっていなかった。それがいいのか悪いのかはわからないけれど、すっきりしていて、居心地のいいゆっくり出来る部屋だ。
窓側には黒い年期が入ったソファーがありもう二十年もの時間を過ぎているのを物語っていた。
優はソファーに座り
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